電極材料の結晶・電子構造解析(基礎研究)
リチウムイオン電池の電気化学反応とその特性を理解するための第一歩は、材料の結晶構造と電子構造の調査である。遠回りのようであるが、精度の高い構造データの蓄積は、もっとも優れた材料を設計する手がかりを与えてくれる。われわれは、X線回折測定、X線吸収分光法などの手法を活用して、平均的結晶構造、局所結晶構造、組成、酸化状態、化学結合などの知見を材料から抽出し、材料の電気化学特性と対比して議論をしている。
★研究例 オリビン型LiCoPO4材料の結晶構造、電子構造と充放電特性
オリビン型LiCoPO4は平均動作電位が4.8V程度と既存のLiCoO2に比べて1V程度高く、次世代の高エネルギー密度型電極材料として注目されている。本研究ではLiイオンを挿入・脱離する間の結晶構造変化と電子構造変化をX線吸収分光法(XAFS)により解析を行った。また結果を第一原理計算と組み合わせることで、実験と計算の結果の対比も行っている。(参考文献 2005, 2004)


★研究例 ペロブスカイト型La1/3NbO3への電気化学的リチウム挿入反応と局所構造変化の観察
ペロブスカイト型酸化物La1/3NbO3はリチウムイオンを吸蔵・放出することが可能な電極材料になる。実用的には重金属を用いているため容量密度を稼ぐことが困難であるが、その充放電サイクル特性は3V-1Vのカットオフ範囲で極めて安定している。このような安定したサイクル特性の原因を究明するために、充放電過程におけるEXAFS測定・解析を行った。(参考文献 2003, 2005)




★研究例 ペロブスカイト型La1/3NbO3への電気化学的リチウム挿入反応と局所構造変化の観察
上述したペロブスカイト型酸化物La1/3NbO3は、良好なサイクル特性以外にも、ペロブスカイトAサイトにリチウムイオンを吸蔵・放出する方法が2通り有る点でユニークである。一つは、電気化学的に(つまり通常の充放電反応で)リチウム挿入をさせる方法であり、もう一つはLa3+をLi+で置換する方法である。前者は遷移金属Nbの酸化還元反応を伴うが、後者は一定である。両者におけるリチウム挿入反応に対する電子状態変化を軟X線吸収分光法のスペクトルと第一原理計算でそれぞれ比較することで、酸素周辺で生起する電荷移動反応の理解を目指した。(2003 2004 2005)

